「バカだな。お前は俺に心底愛されてるんだって自惚れるくらいでいいんだ。それに、浮気なんかする暇があったら俺は美月といるよ。他の女に構ってる時間が勿体ねぇ」



イノリは微笑むとキヨの頭を優しく撫でた。




「…ふふっ。そうだね。イノリは器用じゃないもんね」

「わかってんなら不安がるな。俺はそこらの男とは違う。信じろ」



うん、もう大丈夫。
信じられる。


だってイノリ、言ってくれたもん。



“この異常なまでの愛情が死ぬ程誰かを好きになるって事なんだな”って。



嬉しかったんだよ。

大好きなイノリにそれ程までに愛されてる事が。




イノリは異常なんかじゃない。
イノリが異常なら私はもっと異常だと思う。



だってイノリの些細な言動で、幸せになったり不安になったりするから…




「それより美月、これやるよ」



イノリはキヨに綺麗にラッピングされた箱を渡した。



「何?…ビックリ箱とかじゃないよね!?」

「アホか!!何でビックリ箱なんかプレゼントしなきゃならねぇんだよ!!…いいから開けてみろ」



キヨが包みを開けると、中には有名ブランドの時計が入っていた。


秒針の部分がハート型になっている可愛らしい腕時計。



「え?時計?…何で?」

「…検診とか行く時必要だろ。それに…お前に似合うと思ったから買ったんだよ。丁度沙織に会ったし、女はどういうのあげたら喜ぶか聞いたら、指輪って言われたけど指輪はもうやったし、なら時計だって言われてな」



イノリは赤くなりながら呟く。