続・祈りのいらない世界で

神秘的な式場に

優しく鮮やかなステンドグラスの光が降り注ぐ。



そこに座る親族や少しの友人だけのこじんまりとした結婚式。



既に参列者が席についている式場にキヨとイノリが一緒に向かうと、キヨの両親とイノリの両親が2人を待っていた。




「…美月。凄く綺麗だ。さすが私の娘だな」


「私はお父さんにそっくりだもんね。…お母さんに似たらお姉ちゃんみたいな美人に育ったのかな?」


「お前も私に似たおかげで十分べっぴんさんだよ」


「あはは!お父さんのナルシスト」



イノリと手を繋いで笑っているキヨを見た父は、うっすらと涙を浮かべた。



キヨは生まれて初めて父の涙を見て、自分がどれだけ愛されて育ってきたのかを知った。




「…美月、お前は今は泣くなよ?折角プロがした化粧で化かしてもらってんのにボロボロになるぞ」


「化粧そんなに濃くないもん!!イノリのバカっ」



瞳がうるうるしているキヨの額にキスを落とすと、イノリはキヨを残し、階段を挟んだ反対側に移動した。



キヨも目尻の涙を拭うと指定されている位置へ両親と共に移動する。




2人が定位置につくと、硝子のグランドピアノを担当者が優しく奏で始めた。



それに合わせてイノリとキヨは向かい合わせに2つに別れている階段を別々に下り、お互いに一礼をするとイノリは先に再び階段を下る。



キヨは残りの階段を下り終えると、目の前にいる父に頭を下げ、父と腕を組んだ。




優しいピアノの音色に包まれて、祭壇前に立つイノリの元へキヨはゆっくりゆっくり父と共に歩んでいく。




イノリの横には、一番前の座席に座るカンナとケン、そしてカゼが優しくキヨを見つめていた。






カゼ…
見ててくれてる?


イノリまでの道のりはこのバージンロードのように長かったけど

ちゃんとゴールはあったんだよ。



カゼ達がいてくれたから

私はここに辿り着けたの。




ちゃんと
見届けてくれてる?