続・祈りのいらない世界で

「ねぇイノリ。さっきカンナが、カゼと式挙げたかったなって言ってたの。…どうも出来ないってわかってるけど、何かしてあげられないかな」


「何かって言ってもなぁ。もう…カゼはいねぇし。…まぁ、あるっちゃあるけどな」


「何?」


「俺とキヨが幸せになる事だ。カゼもカンナもそれを願ってくれている。…それがカンナを幸せにするはずだ」



イノリの言葉にキヨは頷いた。



もう姿形のないカゼを生き返す事など絶対に無理な話である。

だから今出来る事をしてあげる事が、カンナを幸せにする。


そう思った。




「あっ!イノリまた“キヨ”って言った!!」


「…仕方ねぇだろ。20年以上キヨって呼んできたんだから癖になってんだよ」



イノリは立ち上がるとドアを開いた。




「…ほら、みんな待ってっから早く行くぞ。美月」



キヨは嬉しそうに返事をすると、イノリと共に式場へと向かった。





小さい頃、キヨがカゼの隣りで願った夢。


『“イ”の付く人のお嫁さん』



長い歳月を経て
今日、その願いが叶う。