「…どうだい?」

返事を聞かれました。
私はじっと考え込みました。

この神社が建つまでの間、ずっとここにいたい…と思ったけど、それはやっぱり2人に迷惑がかかります。
それでも、今すぐ家には戻りたくありません。

(だったらこの1週間で、生きてく意味を、せめて見つける努力をしてみよう。家ではできない体験を見たり聞いたりしてるうちに、もしかしたら何かが変わっていくかもしれない…)

「……1週間でもいいので…置いてください。私はここで…自分が生きてく意味を探してみようと思います…」

『生きてく意味』なんて、大それた言葉を使ったけど、それがどんなものかはまだ自分でもよく分かりません。
とにかく、この場所にとどまって、タコさんやキツネさんの仕事を眺め、心を癒す…。
それから家に帰って、自分の思いをきちんとお母さんに伝えよう…。

…そう決めました。

「よしっ、じゃあ決まりだ。1週間、自分の為になるように生活しなさい。ワシらの世話や家事なんかは手伝わなくてもいい。ののかちゃんはここに、療養に来てるくらいのつもりでいるから」

「りょうよう…?」

漢字が分かりませんでした。当然、意味もナゾです。
タコさんは、「ああそうか…」と呟き、分かり易い言葉で言い換えてくれました。

「心や体の疲れをとりにきた…休みに来た…と思えばいいんだよ」

「1週間の休暇だと思って暮らせばいい。学校の先生に休むように…と言われたんだろう…?」と、タコさんは笑いながら話しました。
声には、優しさが沢山詰まってました。

私はこの人に会えて、(ホントに良かった…)と、しみじみ思いました。


…暗く閉ざされてた心が、ぱぁ…と開けるような気がしました。
空の青さが、一層、心を明るく照らしてくれます。


……『とうりょう』と約束を交わした、3日目のお昼のことです…。