「…では。これで失礼します」

家出用品の入ったバッグを片手に立ち上がりました。
一緒にタコさんも立ち上がります。

「本当に、旅行中なんだね?」

確認するように聞いてきます。

「…はい。ホントに旅行中です!」

ウソをつく事に慣れてないので、胸がチクチクと痛みました。
タコさんは困った顔のまま、軽くため息をついて、

「…じゃあ、これを持ってお行き」

…と、アルミホイルに包んだ物を渡してくれました。

「…何ですか…?」

ほんのり…と温かい物でした。
タコさんは、ニコリと笑って、「おむすびだよ…」と教えてくれました。

「おむすび…」

さっき食べた、美味しい朝ごはんを思い出しました。
ご飯の上に乗っていたお漬物も、とてもグーでした。

「ありがとうございます」

意気揚々とバッグに入れ込み、部屋を出ようとしたら…


「…もしも、何か困った事があったら、この家においで。あんたとワシらは『トモダチ』だから…」

タコさんの言った言葉に、私とキツネさんはぎょっとしました。

いつからトモダチになったんだろう…と、首を傾げました。
でも、タコさんはその言葉を撤回しませんでした。

ぺこん…と頭を下げました。
キツネさんは私に何か言おうとしましたが、タコさんに止められました。

「棟梁、いいんっすか⁉︎ 」

焦ったように聞いてます。
でも、タコさんは慌てもせず…

「いいんだ…」

と構えて見送ってくれました。