「お父さんもお母さんも、あんたが旅に出てる事は知ってるんだね…?」
「はい。知ってます!」

ウソじゃないから、ハッキリ答えました。
タコさんは、うんうん…と頷いて、「じゃあ…」と続きを言いました。

「…今夜が2晩目になるけど、泊まる所はあるのかい?」

昨夜は野宿しようとしてる所を、2人に発見されてしまいました。
2泊目の夜は、どこに泊りましょう…?


「…まだ決まってませんが…大丈夫です。屋根がない所でも眠れます…」

むしろ、屋根のない所の方が眠れます…と、言いたくなりました。
私は、人の声がするのが怖くて、高校の教室にも入れなくなった人だから。

「ふぅん…」

タコさんは、困ったな…という顔をしています。
私を1人、外へ放り出すこともできないと思ってるようでした。

「…いいじゃねぇっすか。本人が屋根ナシでも寝れる…って言ってんだから。どこへでも行ってもらいましょーよ!」

すっかり怒りの冷めたキツネさんは、私とタコさんに背中を向けたまま言いました。

「…ふぅん。まぁ、そうだが…」
「関わらねぇ方がいいって…」

ボソボソ…と小声で言ってるのが聞こえます。
私の耳は、人一倍敏感なんです。

「…ホントに大丈夫なので、ご心配いりません。美味しい朝ごはんを食べさせていただき、ありがとうございました。ごちそうさまでした」

ネギのたっぷり入ったお味噌汁はサイコーでした。
カラダもココロも、元気になるような味でした。