俺は、お前がいいんだよ。


目に映ったのは、水に濡れた陽希の姿。


荒い息遣いで、心配そうな表情をしながら私を見つめる。


「来るのが遅くなって、ごめんな…。大丈夫か?」


「わ、私は…大丈夫。でも、陽希が…」


陽希の前髪からポタポタと零れ落ちてくる雫で私の頬が濡れる。


その水を陽希は優しく拭った。


「俺は平気だよ。」


私に向けられたのは、温かい声と柔らかい笑み。


胸がいっぱいになるのを感じていると、陽希はスッと立ち上がって、栗山さんの方を見た。


「せ、瀬ノ内君っ…大丈夫!?ごっ、ごめんなさい……。私、バケツを持つ手が滑って…水を掛けるつもりなんてなくて……」


陽希の傍に近寄って来た栗山さんは、濡れている髪に触れようと手を伸ばす。


でも、陽希は…その手を強めに振り払った。


「俺に触るな。それから、謝るべき相手が違うんじゃねぇの?」


とても低くて怒りを帯びた声。


振り払われた手をさすりながら、栗山さんは黙り込んだ。