俺は、お前がいいんだよ。


「伊織さんみたいな空気の読めなさ過ぎる女の子、初めてよ…。」


低い声にビクッと肩が上がる。


栗山さんは地面に置いていた水入りのバケツを手に持った。


「瀬ノ内君の彼女になるべきなのは私なのに、なんでアンタが……」


今まで見たことのないような怖いオーラを漂わせる栗山さんを前に、嫌な汗が背筋をつたう。


尻もちをついたまま少し後ずさりをすると、栗山さんから冷たい溜め息が漏れた。


「伊織さん、ちょっと頭を冷やしたら?」


バケツの水、掛けるつもりだ…。


そう思った私は、咄嗟に両手で頭を覆って目をギュッと瞑る。


ずぶ濡れになるのを覚悟した、その時。


「………!?」


フワリと抱きしめられる感覚がしたかと思うと、バシャッと勢いよく水が掛けられたような音が響く。


えっ…?


何が起こったのか気になって、ゆっくり目を開けた私。


顔を上げた瞬間、瞬きを繰り返した。





「陽希……。」