「もし、あの場を何とかして止めたい…って本当に思っていたなら、表情だって違ってくるだろ。笑うなんて、有り得ねぇ。」


「…………。」


それじゃあ、どうして栗山さんは…さっき謝ってくれたんだろう…?


疑問を抱いていると、陽希は繋いでいた私の手を少し強く握った。


「あの女、気を付けた方がいい。なんだか、嫌な予感しかしない…。」


「えっ…」


「高校は違うし、住んでる場所も桜瀬駅の北口方面みたいだから、普段…遭遇する可能性は低いとは思うけど…。ただ、合同キャンプの日は会うかもしれないから、特に警戒した方がいいかもな。」


「う、うん……。」


ぎこちなく頷いた。


嫌な予感か…。


優しそうな栗山さんが、私や陽希に何かするなんて思えないけど…


用心するのが無難かもしれない。


何事もなければいいな。


そう前向きに祈りながらも、私の心の奥では…小さな不安が燻り始めていた。