カアッと熱くなった頬をパタパタと仰ぐ。
顔を俯けた時だった。
「由依、何してんの?」
突然、耳元で囁かれた声。
ビックリした反動で顔を上げると、横から至近距離で見つめる陽希の姿が目に映った。
「えっ!?は、陽希…!!」
勢いよく席から立ち上がる私に、陽希はフッと笑う。
「驚きすぎ。イス、ひっくり返ってるし。」
「お、驚くに決まってるでしょ!普通に話し掛けてくれればいいのに…。」
心臓、止まるかと思ったよ。
慌ただしく跳ねる鼓動を感じながら、倒れたイスを元に戻した。
「今、瀬ノ内君の話をしてたから余計に驚いたんだよね、由依。」
「ちょ、ちょっと恵理子!」
「来月のキャンプ、瀬ノ内君も会場が一緒で良かったね…って話をしてたの。由依、すごく嬉しそうな表情してたから。」
私の制止を振り切って、陽希に事情を話す恵理子。
恥ずかしくて視線を泳がせていると、陽希は私の頭をフワリと撫でた。
「何それ、すげぇ可愛いんだけど。」
手で口元を隠しながら話す陽希。
その頬は、少しだけ赤みを帯びていた。