驚いている男の子に、私は…“使えば?”って素っ気なく呟いた。


雨は止む気配がなかったし、男の子は服が濡れていた。


このまま肌寒いところにいたら、風邪をひいてしまう…。


そう思ったんだ。


少し戸惑いながらも、私が突きつけた傘とハンカチを受け取った男の子。


“ありがとう”ってお礼を言ってくれたけど、照れくさかった私は、“風邪をひくといけないから、早く帰った方がいいよ”っていう本音を口には出来なかった。


“たまたま傘を持ってただけ。”


“傘ぐらい、ちゃんと持って出掛ければ?”


代わりに飛び出した言葉は、可愛げのないものばかり。


そのあと、私は逃げるように男の子の前から立ち去ったんだ…。


まさか、あの時の男の子が瀬ノ内君だったなんて…。


「思い出してくれた?」
 

「う、うん…。」


頷いた私は、瀬ノ内君を凝視した。