俺は、お前がいいんだよ。


「どうした?」


様子が少しおかしいと察知したらしく、陽希が背を屈める。


私はキョロキョロと周りを見た後、陽希の耳元に顔を近付けた。


「ごめん、あの……と、トイレに行きたくなっちゃって…」


「そっか。近くに…ありそう?」


陽希は私に聞こえるぐらいの小さな声で話す。


「ほら、あそこにトイレの案内板があるから、直ぐ近くにあると思うんだ。行ってきていい?」


10メートルほど離れた場所に掲げられている看板に視線を向けた。


「つーか、心配だから俺も行く。」


「えっ、そんなに遠くじゃないから迷わないよ。それに、ちゃんと男の人には警戒するから。」


陽希のことだから、さっきみたく…男の人に声を掛けられるんじゃないか…って心配をしてるんだろう。


そんな人、滅多にいないんだから大丈夫なのに。


「せっかく、ここまで並んでたわけだし、このタイミングで陽希まで抜けたら、また並び直さなくちゃだし…。そうしたら、時間も掛かっちゃうから…。ね?」


ジッと見つめると、陽希の頬が少し赤く染まった。