「柏木君、えっと……今のは忘れて下さい。」


「えっ？」


「あの、色々と気遣ってくれて…ありがとう。」


気まずさを感じながら本当の気持ちを伝えると、柏木君はニコッと笑った。


「男が女の子を守るのは当然だから。」


直ぐにお礼も言えない私を怒るわけでもなく、サラリと温かい言葉を掛けてくれるんだ…。


陽希といい、柏木君といい、優しすぎるよ…。


胸が熱くなるのを感じていると、柏木君が私の顔を覗き込んだ。


「伊織ちゃん、もしかして…俺の言葉にドキッとしてくれてる？」


「あっ、えっと…柏木君の優しさにジーンとなっちゃって……」


「えっ…」


その言葉が意外だったのか、目を見開く柏木君。


不自然なぐらい素早く私から視線を逸らすと、クシャクシャと頭を掻いた。


「まさか、そんなこと言われると思ってなかったから、不意打ちだな…。逆に、こっちがドキッとした…。」