俺は、お前がいいんだよ。


「あのさ、俺…伊織に話があるから、今日の放課後…屋上に来て。」


「えっ!?」


耳元で囁く少し低い声。


驚きのあまり固まる私に、瀬ノ内君はニコリと微笑んだ。


「じゃあ、また後で。」


「ちょ、ちょっと…!!」


勝手に話を進めないで欲しいんですけど…!


5組の教室へと歩いて行く瀬ノ内君。


その後ろ姿を見ながら呆然と立ち尽くしていると、いつの間にか廊下に出来ていた女子の人だかりの中から、恵理子が勢いよく駆け寄ってきた。


「由依、今の何っ!?どうして、瀬ノ内君と仲良いの?」


「ち、違っ…別に仲が良いわけじゃないから!誤解よ、誤解…!」


「とにかく、話は図書室で聞かせてもらうわ!まだ、午後の授業まで時間もあることだし。」


ニヤリと笑った恵理子。


私の手を取ると、グイグイと引っ張って廊下を突き進み始めた。


変な誤解してるよ…絶対。


そんなんじゃないのに…。