私が社長の言葉を突っぱねたような言い方をしたのが気に入らないのだろうか?
社長は私をしばらく無言のまま見つめるとデスクの方へと行く。
そして、内線で誰かを呼んでいた。
「連れてきなさい」
いったい何が起きるのだろうか?
誰がここへ来るのだろうか?
その契約の関係者? ならば私はここにいられない。
社長は何か勘違いをしているのではないだろうか?
透も社長も、私には謎だらけだ。
すると、しばらくして部屋のドアが開いた。
そこに現れたのは芳樹だった。
秘書に連れられて芳樹が不安そうな顔をしてやってきた。
「さて、加奈子さん、この子の説明をしてもらおうか。」
社長は全てお見通しだ。
何もかも知っている。
もしかして透も知っている? そう思って透の顔を見てみると、透は芳樹を見て驚いていた。
ああ、透はこれまで芳樹の存在を知らなかったのだ。
透の驚きの顔を見ているとそれがよく分かる。
しかし、社長はそうではなかった。
芳樹の存在を知ったから私をここへ呼んだのだ。
すると急に体が震えだす。
もしかしたら私から芳樹を取り上げられる?
私の愛する息子をこの透と社長に奪われてしまう?
ああ、そうなったら、私はどうやって生きていけばいいの?!
「親父、この子はいったい・・・・」
透は我が子を見つめながら何かを感じ取ったに違いない。
透とよく似た男の子だ。
顔全体の輪郭や目元など透とは瓜二つ。
芳樹は透のミニチュア版と言っていいほどに似ているのだ。
こんな子を会社の保育施設に預けるんではなかったと、今になって後悔してももう遅かった。



