「お邪魔します……」

「どうぞー。凛音、そこに座ってね」



通されたのはリビングの端にある大きな鏡の前で。


どうやら此処で準備をするらしい。



「さて、色々お話したいところだけど時間ないし、取り敢えず準備始めましょうか」



愛歌さんはそう言うと、リビングのテーブルの上に置いてあった大きなボックスを持ってきた。



え、待って。どういうこと!?



「ふふ、驚いた?愛歌はね、メイクアップアーティストなのよ。今日、凛音が此処で浴衣着るって言ったら『あたしが着せたい!』って言ったから呼んだの。内緒にしててごめんね?」


「え、愛歌さんメイクアップアーティストなんですか!?すごーい!そんな凄い人にして貰えるなんて嬉しい!真紀さん、愛歌さんありがとう!」



まさかの新事実に手を叩いてはしゃぐあたし。


メイクアップアーティストとか、そんな凄い人にやって貰えるなんて夢みたい!嬉しすぎる!



ハイテンションのあたしに苦笑する真紀さん。


一方、愛歌さんはと言うと、胸の前で両手を握り、目をキラキラさせていた。


あ、なんか嫌な予感がする……。



「いやーん!凛音ちゃんなんて可愛いのっ!!もうお姉さんが可愛くしてあげちゃう!!」



やっぱり!


二回目のハグにまたもや窒息しそうになり、真紀さんに向けて早々に白旗を挙げる。



「あ、愛歌、ハグはいいから早くしてあげて」



真紀さんのその言葉に「そうだったわ!さぁーてやるわよー!」とあたしを離して気合いを入れる愛歌さん。



た、助かった……。


ゼーハーと息を乱しているあたしを余所に、キラキラオーラを纏った愛歌さんは着々と準備を進めている。