「あんな事って?」


「……え?あたしそんな事言いました?」



そう言って笑って誤魔化すけれど。



「あんな事って?」

「………」



無理でした。


威圧感が半端無くて誤魔化せそうにありません。



「いや、その……」



見透かされそうで十夜の目が見れない。



「十夜、あんな事っつーのはな、昨日凛音と──」


「煌!!」


「ってぇ!」



余計な事言うなっつーの!


暴露しようとした煌の後頭部を、後ろから思いっきり引っぱたいて黙らせる。



「おまっ──」

「それ以上喋ったら焼肉奢ってもらうからね」

「………」



耳元でそう囁けば、途端に黙り込んだ煌。


……オイ。それはそれでムカツクんですけど。

あたしの事どんだけ大食いだと思ってんの。








「──凛音」


疲れた、と背凭れに凭れて目を瞑ると、タイミングを見計らったかの様に声を掛けてきた十夜さん。


けど、あたしはそれを無視。


だって、これ以上喋ったら絶対ボロが出るから。



「オイ」

「………」

「……チッ。後で覚えてろよ」



ひぇ!


聞こえてきた舌打ちに早くも狸寝入りした事を後悔するあたし。


けど、今更起きる事も出来なくて。


結局、駐車場に着くまで寝たフリを続ける事になってしまった。