バイクを走らせて数分後、マンションの前へと到着。


「ホラ」


エンジンをかけたままバイクから降りた煌が、いつものように手を差し出してきた。


地面へと降ろして貰い、「ありがと」とお礼を言ってヘルメットを渡す。



「明日も朝早ぇから早く寝ろよ」


「うん、煌もね」


「俺は遅くても起きれる」


「あたしも起きれ──」


「ねぇだろ」



うっ。よくお分かりで。


冷めた目であたしを見下ろす煌に「あはは」と笑ってスルー。


これ以上怒られるのは勘弁だからね。凛音ちゃんも学習するのさ。




「早く寝ろよ。寝坊したら置いて行くぞ」


「はーい」



寝坊したら間違いなく十夜にも怒られるしね。

早く寝なきゃ。


じゃないと絶対──



「って、えぇぇぇぇぇ!?」



何、いきなり!?


突然ズイッと迫ってきた煌に一歩後ずされば、マンションのブロック塀に背中をドンッとぶつかって。



「──凛音」



その囁きと共に煌の顔が迫ってきた。


……と思ったら。



「いったぁーい!!」



ゴンッという凄まじい音がその場に響いて、おでこに激痛が走る。



「今日の罰だ」



何が罰だよ!!



ジンジンするおでこを両手で押さえて煌を睨み付けるけど、煌は悪びれる様子もなく視線を上へと向けている。


そのしてやったり顔がムカツクんですけど!!