「壱さんどこ行くの?」
車に乗り込んだあたしは運転席にいる壱さんにそう問い掛けた。
隣にいる十夜に聞かずにわざわざ壱さんに聞くのはやっぱり不自然なんだろうか。
だって、隣から物凄い視線を感じるから。
そんな十夜の態度に気付いているのかいないのか分からないけど、壱さんはいつものようにバックミラー越しに「雷さんのとこだよ」と言って微笑んでくれて。
「雷さんのとこかぁ。楽しみ」
壱さんのお陰で車内が少しだけ和んだ気がする。
まぁ、あたしと壱さんの間だけだろうけど。
繁華街にあるお馴染みのパーキングに車を止め、六人でTear Dropまで歩いていく。
相変わらず凄い騒ぎだけどそれももう慣れた。
まぁ、女子達からの視線がウザイのは変わりないけどね。
それにしてもあたしの変装、完璧じゃない?
未だにあたしが東條 凛音だってバレてないとか凄すぎる。
ウィッグ持ってきてて本当に良かったよ。
変装してなかったら今頃凛音ちゃん八つ裂きにされてるし。
長いアーケードを抜け、雷さんのお店に到着。
「りーのーちゃん!待ってたよーん!!」
「ぅぐっ」
ドアを開けると、今やお馴染みとなっている雷さんの抱擁が待っていた。
相変わらず馬鹿力の雷さんに白目を剥きそうになるけれど、あたしも雷さんにお返しのハグ。
何だかんだで雷さんの抱擁は嬉しいんだよね。


