「それにしても運が良かった。まさか黒皇と二人で繁華街に来るとは思ってもなかったしな。しかもアイツと離れて一人になってくれたし。ホント運が良かった」


「………」



……そうか。そういう事だったのか。


何であたしの存在を知っているのか不思議だったけど、あたしが十夜と一緒に居たから。


だからバレたんだ。


失敗した。


繁華街だと逃げやすいと思ったから繁華街を選んだのに。


こんな事なら倉庫で言った方が良かった。






「ってな訳で、俺等と一緒に来い」


「は!?」



ちょ、冗談でしょ!?



あたしの腕を乱暴に掴んで歩き出す男に慌てて抵抗する。



「離してよ!あたし関係ないって言ってんでしょ!?」



冗談じゃない。


連れて行かれたら十夜達に迷惑が掛かるのが目に見えてる。


それだけは絶対に御免だ。



「離してってば!行かないって言ってんでしょ!?それにあたしはもう──」



鳳皇とは関係ないの……っ!!




そう、心の中で叫んだ時だった。





「──その腕、離せよ」





背後から聞こえてきたのは、男の声。




「……っ、なんで……」



直ぐ様振り返ると、そこに居たのは此処に居る筈のない中田で。



「……何で中田が此処に居るの?」



久しく見ていなかったその顔に動揺が隠せなかった。