此処に来たのは失敗だった。


此処は良い事も悪い事も思い出し過ぎる。


今のあたしには不適切な場所だ。





「ママ~!くまさんいっぱいー!!」


「………っ」



遠くの方から聞こえてきた子供の声にハッと我に返って、流れ落ちる涙を慌てて手の甲で拭った。



帰ろう。


あれから結構時間が経ったし、大丈夫だよね?







お店を出て、念の為周囲を確認する。


十夜の姿がない事に安堵しながらも、心の奥では寂しいと感じてる自分がいて。

本当に自分勝手だと思った。


自分から離れたくせに“寂しい”なんて、そんなこと思う資格ないのに。







遅い時間なのにまだまだ人が多い繁華街。


人の話し声や笑い声に少し安心感を覚えた。


今はそれに救われてるような気がする。





──そう思っていたのに。




「ねぇ」




まさかこんな所で狙われるなんて思ってもいなかった。



「──何?」



振り返った先に居たのは、数人の男達。