「………」



有り得ない程早くなる鼓動。


それと同時に冷や汗が流れ、手も震え始める。



……っ、なんで?

十夜、あの時居なかったよね?



あの時の事を思い出そうと、頭をフル回転させる。


それで思い出したのは、貴兄が帰った直ぐ後に十夜が来た事。





……もしかして、貴兄と一緒に居た時にはもう迎えに来てたの?



だとしたら、最悪だ。

よりにもよって貴兄と一緒に居る所を見られるなんて。




「アイツ、誰だよ」


「………っ」



十夜の目の色が変わった。


全てを見透かしているかのようなその漆黒の瞳に焦りが募っていく。



どうしよう。上手く嘘をつける自信がない。


でも、正直になんて言えないし。


自分から持ち出した話なのに何も言えないなんて……。


どうしたらいいの?





「誰だよ」


「と、友達」


「友達?友達で抱きしめ合うのか?」


「………っ」



……ウソ。あれも見られてたの?


まさか、それまで見られてたなんて……。






「アイツの所に行くのかよ」