「十夜、煌、逃げるぞ」
力強い声でそう言った彼方が十夜と煌の腕を掴んだ。
そして、壱さんと目配せをして、出入り口付近に居た千暁くんと勇介くんに向かって「陽を頼む!」と叫ぶ。
その命令に慌てて駆け寄ってくる二人。
「彼方離せ!!」
「アイツを連れ戻さねぇのかよ!!」
暴れる十夜と煌を彼方と壱さんが必死に押さえ込む。
「十夜!煌!りっちゃんは来ない!」
「俺だって連れ戻したいけど凛音ちゃんはもう決心してるんだ!お前等にもそれぐらい分かるだろ!捕まったら元も子もないんだよ!」
……壱さん、彼方、ありがとう。
あたしの事、分かってくれてありがとう。
「みんな」
そう小さく呟くと、暴れていた十夜達が動くのを止めてあたしを見た。
「ごめんね。ありがとう………」
“バイバイ”
そう声を出さずに口の動きだけで伝えたあたしに、十夜と煌の目が見開いた。
声に出して言いたかったけど、どんなに頑張っても無理だった。
バイバイなんて、声に出して言えない。
言いたくないよ。
溢れそうになる涙を必死で堪え、ゆっくりと振り返る。
途中、千暁くんと勇介くんに寄り掛かる陽と目が合って、涙が零れ落ちそうになった。
「……陽、ごめんね。あたしが悪いのに手当て出来なくてごめん」
唇が震えて、上手く言葉にならない。
「本当に……ごめんね」
これ以上陽の顔を見ると行けなくなっちゃうから、直ぐに目を逸らして歩き出す。


