「諦めろ。俺は言うつもりもなければ渡す気もない」
淡々とした口調でそう言った貴兄に、鳳皇メンバーの顔が歪んだ。
「──なら、力ずくで取り戻してやるよ」
そう聞こえたかと思うと、単身で突っ込んできた十夜。
それを見た貴兄がチッと舌打ちし、地面を蹴ってあたしと優音の真横を通り過ぎていく。
「……っ止めて!!」
咄嗟に手を伸ばすけど、あと一歩という所で届かなくて。
追いかけようと足を踏み出せば、後ろに居た優音に腕を引かれた。
「優、離して!」
このままじゃ、このままじゃ貴兄と十夜が……。
やめて、
「やめてー!!」
手前で跳んだ十夜が、貴兄の頭目掛けて拳を振り落とす。
「やっ………!!」
その光景を見てられなくて、ギュッと強く目を瞑った。
次の瞬間、耳に届いたのはガッと何かがぶつかる鈍い音。
そして……。
「行かせるかよ」
──殴られた筈の貴兄の声。
直ぐ様目を開けて二人を見ると、目の前には十夜の拳を受け止めている貴兄と殴った格好のまま止まっている十夜の姿があった。
……え?殴られてない?
ホッと安堵の溜め息を吐き出したのも束の間。
「退け」
十夜が反対の拳を貴兄の顔面に突き出した。
「……チッ」
それに一早く反応した貴兄が上半身を折って交わす。


