「──お前等、何者だ」
あたし達から数メートル先で立ち止まった十夜が、優音に向かってそう問いかける。
その問いかけに、あたしは心の中で「あっ」と声を上げた。
そうだった。
今の貴兄は素の貴兄じゃないから十夜達には獅鷹総長だって事は分からないんだ。
今の二人は学校用の“黒髪”で、しかもいつもと違う前髪長めのウィッグを被っている。
優音に至っては黒縁眼鏡までかけてるし、絶対に獅鷹幹部だとは分からない。
二人が今、いつも以上に変装しているのはあたしの為。
あたしが後で苦しまないように。
鳳皇と関わりを断った後苦しまないように。
「何者?それをお前等に言う必要はない」
貴兄は冷めた口調で十夜達にそう言うと、あたしと優音に「行くぞ」と顎で促した。
「た──」
「凛音」
「……っ」
「呼ぶな」
目が合った瞬間そう言った十夜に固まっていた決心がグラグラと揺れ動く。
そんな目で見ないで。
そんな声で呼ばないで。
離れたくないっていう気持ちが溢れ出してしまう。


