下っ端の腕を掴んでいる男の人を呆然と見つめる。



この後ろ姿、さっきの声。


間違いない。優音だ。





「……なん、で……?」



なんで優音がこんな所に居るの?


なんであたしが此処に居る事知ってるの?



“なんで”

“どうして”



その言葉だけが脳内でグルグル回って、息が上手く吸えない。

込み上げてくるのは、言い様のない“焦り”と“不安”。



それは───






「凛音」






“この人”が居ると確信しているから。







貴兄……。





「凛音、喧嘩禁止令出しただろう?」



いつものように優しい笑みを浮かべながら歩いてくるのは、あたしのお兄ちゃん、貴音。





「………っ」


貴兄を見た瞬間、小刻みに身体が震え出した。


それは、“理解”してしまったから。



今のこの“状況”を。