「立てよ」
乱れた服を直しながらそう言った十夜の足取りは軽やかで。
さっきの乱撃がまるで幻だったかの様に平然としていた。
そんな十夜に対し、蹲ったままの中田は何も言わなければ顔も上げない。
そんなに十夜の一発が効いたのだろうか。
「もう終わりか?」
そう投げ掛けた十夜が中田の前で立ち止まった時、
「一発返したぐらいでイイ気になるんじゃねぇよ!!」
その叫びと共に中田が弾ける様に跳躍した。
「……っ!」
それを見て、何故中田が微動だにしなかったか分かった。
中田は不意打ちを狙っていたんだ。
限界まで相手を引き寄せ、テリトリーに入った所へ拳を突きつける。
それが中田の作戦だった。
だげど──
「一発じゃねぇよ。これから先、お前の拳が俺に当たることはない」
そんなもの、十夜には効かなかった。
中田の攻撃をひらりひらりと軽やかに交わし、隙を見て一撃。
バランスを崩した所でまた一撃。
その攻撃は中田の得意とするボクシングによく似ていた。


