「十夜!」
さっきとは比べ物にならない速さに思わず十夜の名を叫ぶ。
危機的状況な筈なのに、そこから一歩も動こうとしない十夜。
結果、中田の拳を真正面から受けてしまった。
「十夜っ!!」
左脇腹にめり込む拳。
息つく暇もなく左から顔面にも落とされ、十夜の身体が左右に揺れ動く。
「やめてっ!!十夜!!」
反撃出来ない程の速さで次々と拳を振り下ろすその姿は、ボクシングの試合でよく見る光景と全く同じでだった。
まるで、中田が十夜をコーナーへ追い詰めているかのように見える。
「あれは……」
普通のボクシングじゃない。キックボクシングだ。
いくら喧嘩が強いと言っても、本格的なスポーツ相手に簡単に勝てる訳がない。
「十夜!!」
二人の元へ行こうと身体を前に突き出せば、両脇の男に押さえ込まれ、身動きが取れなくなる。
「離して!!十夜!!」
「大人しくしろ!お前に邪魔はさせない。やっと……やっと中田さんがこの“力”を出せたんだ。“この日”の為に溜めていた“力”を」
「溜めていた、力……?」
抵抗をやめて男を見上げる。
「そうだ。全ては“鳳皇”を潰す為。けど、それだけでボクシングはしない。一番の理由は“お前”だよ」
「あた、し……?」


