「フッ。余裕なのは今の内だけだぜ?」
そう言うや否や地面を蹴り上げた中田は、十夜との距離を一瞬にして縮めた。
十夜の左頬目掛けて振り下ろされる拳。
十夜はそれを完璧に見切っていて、直ぐ様上半身を折り曲げて回避する。
「──馬鹿が。拳だけだと思うなよ」
十夜の真上で空を切ったかと思えば、次の瞬間には地面を離れていた左足。
それは、中腰になっている十夜の右前頭部にクリーンヒットした。
「十夜!!」
衝撃で右へと傾く十夜の身体。
だが、そこは鳳皇の総長。
倒れると見せかけて地面にトンッと手をつき、軽やかに身体を回転させた後、その勢いを利用して立ち上がった。
「……ハッ。流石だな。まさか跳んで衝撃を和らげるとは」
足を下ろした中田が、嫌味ったらしく手を叩いてみせる。
此処からじゃハッキリと見えなかったけど、どうやら十夜は蹴られる前に跳んで衝撃を緩和していたらしい。
それなら直ぐに立ち上がったのも頷ける。
「──もう終わりか?」
おもむろに顔を上げたかと思えば、更に挑発を繰り返す十夜。
その挑発にまんまと引っかかった中田は、表情を一変させると、
「そんなに殴られてぇなら殴ってやるよ!」
言い終わらぬ内に十夜に飛びかかった。


