「とお……」
名前を呼び終わらない内に中田へと視線を戻した十夜は、スッと右手を上げると「来いよ」と右手の人差し指を自分の方へクイクイッと折り曲げた。
それは、誰もが知っている“挑発”の合図。
十夜は本当に早く終わらせようとしてる。
だって、普段の十夜だったらこんな相手を挑発するような事しないから。
相手を逆撫でするような真似しない。
「……フッ。今までの俺だと思うなよ?」
そう言った中田は、十夜を見て目を細めるとニヤリと妖しく笑った。
……おかしい。
此処に拉致されてから度々感じてはいたけれど、なんで中田はそんなに自信満々なの?何か理由があるの?
その答えはすぐに目の前にあった。
「なっ………!?」
中田がとっているのは、ボクシングのファイティングポーズ。
う、嘘でしょ!?
中田がボクシングしてるなんて……。
……あぁ、そういう事か。だからあんなに余裕だったんだ。
「中田さんがボクシングを始めて三ヶ月になる」
「え?」
三ヶ月?
「それって──」
そう隣に男に言った時、
「来いよ」
十夜が再び挑発した。


