「──アイツは“物”じゃない」
再び暴れるあたしの耳に届いたのは愛しい十夜の声。
その声に誘われて振り向けば、力強い瞳が真っ直ぐあたしを貫いていた。
「凛音は渡さない」
「……決まりだな」
十夜の言葉を“OK”と捉えた中田は、そう言うとポキポキと指を鳴らし始めた。
「ちょっと……!!」
何勝手に決めてんの!?
あたしは中田の所になんか行かない!!
絶対に行かない!!
「オイ、凛音を向こうに連れて行け」
「はい」
「ちょ、離して!」
掴まれたままだった両腕を思いっきり後ろへ引っ張られ、鳳皇とは正反対の方向へと連れて行かれる。
「凛音!!」
「りっちゃん!」
「凛音ちゃ……!」
無理矢理引き摺られて行くあたしを見て、こっちへ走り出そうとする皆。
そんな皆を中田が止めた。
「止まれ!!じゃねぇとこっちも全員出すぞ!!」
その言葉にピタリと足を止め、悔しそうな顔で中田を睨むメンバー達。
「お前等下がってろ。すぐ終わらせる」
そう言った十夜は、中田の方へ歩き出した。
「十夜!!」
それを何とか止めようと力一杯叫ぶけど、十夜は振り向きもしなければ止まる事もせず、少しずつ中田との距離を縮めていく。
そして、中田から二、三メートルの所で立ち止まると、こっちを見て少しだけ微笑んだ。
「すぐ済む。大人しく待ってろ」


