男は小声で言ったつもりなんだろけど、あたしにはハッキリと聞こえた。
十夜達が……此処に来る?
「凛音を連れて来い。くれぐれも油断するな」
男に向かってそう言うと、中田は男を残し、先に部屋から出ていった。
それを見届けて部屋の中へと入ってくる男。
真っ直ぐ此方へと歩いてくる男の眼光は鋭く、本能的に危険を感じたあたしは一歩ずつ後ろへと下がる。
「逃げんな。逃げても結果は同じだ。お前が大人しくしなかったら、さっきみたいに引きずっても連れてくぞ」
「……分かってるし。今更無駄な抵抗なんてしない」
今から行く場所には十夜達が居るんだから。
男に腕を引かれて部屋から出ると、部屋の外には二人の男が待機していた。
出て行くや否や両腕と両肩を掴まれ、半ば引き摺られる様な形で連れて行かれる。
信じらんない。普通、女相手にここまでする?
いくら逃げ出すかもしれないからってここまでしなくてもよくない?
ムカツク!
決めた。
逃げられる状況が来たら絶対逃げてやる。
そう心に決めて、注意深く周囲を見回しながら着いていく。
「来い」
二階から一階に下り、古びたドアを開けて先に入っていく男。
一旦ドアの前で足を止めれば、両脇の男達が後ろを着いて行けと言わんばかりに肩を押してきた。
前のめりになりながらドアを抜けると、そこはさっき十夜達が喧嘩していた場所とよく似ている場所で。
正面には大きな口を開けている倉庫の出入り口があった。
十夜達が入って来るとしたらきっとあそこからに違いない。
そんな事を脳内で張り巡らしてる時だった。
「り……の……?」
微かに聞こえたのは、自分の名前。
もしかして……。
この状況であたしの名前を呼ぶのは一人しかいない。
……陽?
「……っ、陽っ……!!」
──振り向いた先に居たのは、変わり果てた姿で倒れている陽。


