「アンタねぇ!あたしが此処まで来るのにどれだけ体力使ったと思ってんの!?普段おしとやかなあたしが木登りまでしたんだからね!!」


その場で仁王立ちし、煌に向かってビシッと指を差すと、「は?木登り?」と目が点になった煌。


その隣では十夜が何言ってんだ的な顔で顔を顰めてるし。


コイツ等、あたしの苦労を全然分かってない!



「あたし、ロープで縛られたんだよ!?それをカッターで──」

「凛音!!」

「凛音ちゃん!後ろ!!」



「……へ?」



十夜と壱さんの言葉に一瞬きょとんと目を見開くあたし。


けど、背後に気配を感じて、瞬時に振り返った。


「……っ」


振り向いた瞬間、視界に映ったのは人の腕。


その腕をしゃがんで交わし、膝をついた所で敵を確認した。


目が合ったのは悔しそうな顔であたしを見下ろしている一人の男。


この男、さっきあたしが蹴った男だ。


という事は……。


……やっぱり。



廊下の奥から走ってきた男達にチッと舌打ちする。


煌に文句言ってる場合じゃなかった。


此処に居れば安全だと思ったのに、どうやらそうではなかったようだ。