ったく、しつこい!!


「降りる訳ないでしょうが!」


枝に手を伸ばし、枝に飛び移ろうとした、その時。

すぐ傍まで迫っていた男に足首を掴まれた。


「これ以上先には行かさねぇからな!」


「……っ、だから、しつこいって言ってんのよ!!」


掴まれている足を力任せに振り上げ、男の肩に思いっきり蹴る。


すると、その衝撃で男は後ろに仰け反り、足首から手が離れた。


その隙に木を登っていく。




危ない危ない。

もう少しで捕まるとこだったよ。



けど、まだ安心出来ない。

コイツ等はあたしを捕まえるまで追いかけてくる気だ。


その証拠に、他の男達もフェンスを登ってきたし。


早く登らなきゃ!


窓近くの枝の到達したあたしは、勢いをつけて倉庫の屋根に飛び移った。


「とっとっとっと!」


何とか屋根に着地出来たものの、不安定な枝から跳んだもんだからバランスを崩して前のめりになる。



「っはぁー、怖かった!」


もう少しで落ちる所だったし。

こんなとこから落ちたら怪我じゃ済まないって。



「テメェ、待てや!!」


ん?


その声に振り返ると、斜め下には必死になって木を登っている男達がいて、思わずプッと吹き出してしまった。



何ともまぁ、可哀想な姿だこと。


少しだけ哀れに思ったあたしは、「落ちないようにねー!」と声をかけて、手を振りながらその場を後にする。


「テメェ待ちやがれ!!」


肩越しに振り返れば、悔しそうな顔で叫んでいる男達。


揉みくちゃにされている所を見ると、どうやら木登りは得意じゃないらしい。


あんな状態で倉庫に飛び移れるのだろうか。


まぁ、あたしには関係ないけど。