よし。早いことスマホを取り出して十夜に電話しなきゃ!


引き出しの中から錆びたカッターを取り出して、刃を下にして小さく前後に動かす。


前に縛られてるんなら未だしも、後ろで縛られてるからなかなか思うように切れず、悪戦苦闘。



あー!駄目だ。疲れた。ちょっと休憩しよう。


苛立つ気持ちを抑え、切れ味の悪いカッターを持ち直して椅子にドカッと腰を下ろす。



っていうか、今気付いたけど、先に電話した方が良いんじゃない?


だって、さっき五分で着くって言ってたし。だとしたら、もう着いててもおかしくはないよね。


という事は、十夜達は手前から順番に探してるって事になる。


そんな事したら中田の思うツボだ!



「……一か八かやってみるか」


縛られた腕をいける所まで動かして、ポケットを探る。


運良く、半分ほど取り出せたものの、この角度からじゃ画面がよく見えない。


仕方ない。勘でいくか。


画面をスライドさせ、数回タッチする。


多分、これで履歴が開いた筈だ。


どこかしら押したら幹部の誰かに繋がるだろう。



お願い。繋がって……!



その願いはすぐに叶って、電話口から人の声のようなものが聞こえた。



『……の………に……』


けれど、何を言っているのか分からない。



誰!?十夜!?煌!?

ううん。誰かなんてどうでもいい。


あたしは伝えなきゃいけないのは自分の場所だけ。



「十夜!煌!あたしは一番奥の第一倉庫に居る!他の倉庫に居る敵は無視して!その敵は──」


そこまで言った時だった。


スマホから聞こえてきたのはピピッという機械音。



「……っ、まさか……」



その音には聞き覚えがあった。

これは……電源が切れる音。