「煌」

「分かってる」


十夜の言いたい事が分かって、ポケットからスマホを取り出して壱に電話をかける。



『──はい』


「壱か?」


『うん』


「面倒な事になった」


『面倒なこと?』



訝しげに問い掛けてくる壱にさっき十夜に説明した内容を簡潔に説明する。



『……分かった。じゃあ俺は二人が来るかもしれないから車で待機してる。もし二人が見つかったら連絡して』


「OK。じゃあな」


全部説明し終わった俺は電話を切り、前を走る十夜を呼んだ。


とその時、突然階段手前で立ち止まった十夜。


……なんだ?


傍に寄っていくと、立ち止まった理由が分かった。


十夜が見ているのは、階段の下から姿を現した“あの女達”。


女達はちょうど階段の途中にある踊り場に上がった所で、会話に夢中になっているのか俺達に全く気付いていない。


十夜は階段を下りて行くと、道を塞ぐように女達の前に立ちはだかった。


そこで漸く十夜の存在に気付いた女達。


女達は俺達に気付くや否やヒッと声を上げて一後退し、怯えた表情で身を寄せ合った。



ハッ。怖がるくせによく凛音を呼び出したもんだな。


あの時、“次はない”と凛音が警告したにも関わらずだ。


って事は、どうなっても文句は言わねぇよな?