『凛音?』

「……はい」


電話越しに聞こえてきた貴兄の声が余りにも怖すぎて、思わず敬語で返事してしまった。


これは相当怒ってらっしゃる。



『昨日何で電話に出なかった?』

「………」

『凛音』

「す、スマホ、昨日の夜見てなくて……」


早く言えと言わんばかりにあたしの名前を呼ぶ貴兄に、小さく返事する。


嘘は言ってない。

昨日は本当に見てなかったから。


貴兄から電話が入ってることに気付いたのは朝、彼方からメールが来た時。


流石にあそこで貴兄に電話出来ないから、後にしようと放っておいたんだよね。忘れたけど。



『スマホは常にチェックしろって言ってるだろ?』


「……ごめんなさい」


ここは素直に謝っておこう。

じゃないと後が怖いし。


『次からは気をつけろよ?優音も心配してたぞ』


「うん。ごめん」


優しくなった声色にホッと安堵の溜め息を吐いて、次の言葉を待つ。


『凛音。俺が何回も連絡したのは言いたい事があったからだ』


「言いたい事?」


何?


『夏休み、こっちへ帰って来い。親父とお袋が帰ってくる』


「パパとママが!?」


『あぁ。だから明日の昼、迎えに行く。一時にマンションの前で待ってろ』


「ちょっ、明日!?そんな急なの!?」


いくらなんでも明日は急すぎるよ。今聞かされたばかりで何も用意してないし。


それに、実家に帰ると当分帰って来れない。

それを十夜達に言わないと帰れないよ!