「……お前は、何で俺が置いて行ったのか分かんねぇのかよ」


「……え?」



急に不安げな口調になった十夜に、俯いていた顔が自然と上がる。



「……十夜?」


「帰るぞ。言い訳は帰ってから聞いてやる」



目が合った十夜はそれだけ言うと、くるりと踵を返して歩みを進めた。


その後ろ姿を目で追いながら「逃げたい」と呟くあたしと陽きゅん。



あー、帰りたくない。帰ったらお仕置きが待ってる。

きっと煌も一緒になって責めてくるだろうし。


あー、もうホント泣きそう。






「りっちゃん、陽、お前等ビックリさせんなよ」


「まさか二人が来るなんてね。ビックリしちゃった」


「あははははは……」



苦笑しながら寄ってきた彼方と壱さんに最早空笑いするしかないあたしと陽。



「……あ、ねぇ。コレどうするの?放置?」


歩きながら目を向けるのは、足元に転がっている黒烏達。


目が覚めた人も居るみたいだけど、殆んどの人がまだ転がったままになっている。



「……あー、この後処理する」


「え、そうなの?」


「そ。だから、りっちゃんは十夜と壱と倉庫に戻っててな」


「え、あたしと十夜と壱さんだけ?」



って事は……。



「あたし一人でお仕置き?」


「……んー、それは分かんねぇけど」



ドンマイ、と肩を叩く彼方に「そんなぁ…」と項垂れるあたし。


陽はお仕置きから逃れて嬉しいのか、手を叩いて喜んでいる。