「……オイ、何だよ?」
言いかけて止めたあたしを不審に思った煌が下から訝しげに覗き込んでくる。
「別に。っていうか──」
「オイ」
「ん?」
「ん?」
呼び掛けられて、煌と二人、同時に振り返る。
と。
「ぎゃ!」
「うおっ!」
真後ろに居たのは、仁王立ちしている大魔王十夜様。
コワイ!!コワすぎるんですけど!!
こめかみにくっきりと浮かんでいる青筋。
見下ろす双眸は今にも突き刺さりそうなほど鋭い。
いや、それよりも身に纏っている怒気の方がヤバイかもしれない。
「凛音」
「……ほい」
「………」
「……はい」
何とか場の空気を緩めようとおちゃらけたら、更に視線が鋭くなってしまった。
あぁぁぁぁ、余計な事するんじゃなかった。
「陽、隠れても無駄だ。出てこい」
そう言った十夜に顔を上げれば、十夜の視線は何故か彼方に向けられていて。
「陽!」
その彼方の後ろから、陽が頭だけぴょこんと出しているのが見えた。
怒られる事を分かっているのか、下を向いたままちょこちょこと歩いてくる陽。
その歩き方がペンギンみたいに可愛くて、こんな状況にも関わらず悶えてしまった。
「──大人しくしてろって言ったよな?」
「……はい」
「……はい」
陽と二人、仲良く並んで十夜からお説教。
今回の事は全面的にあたし達が悪いから何も言い返せない。
っていうか、コワすぎて言い返す気にもならない。