「行くぞ」


あたしと違ってピンピンしている煌と彼方と壱さんは、停車してすぐに車を降りて行った。



……うっぷ。あの運転でよく動けるよね。ある意味感心するよ。



そんな事を思っていると。



「――心臓、止まるかと思った」



まだあたしを抱き締めたままの十夜が、あたしの首筋に顔を埋めてぼそり、そう呟いた。



心底安心したように呟いた十夜にプッと心の中で笑う。



なに。十夜も壱さんの運転怖かったの?



可愛い過ぎる十夜の言葉に「あたしも心臓止まるかと思ったよ。こんなに怖いとは思わなかった」と賛同。



すると十夜はそっとあたしを離して、


「阿呆。そういう意味じゃねぇよ」


そう言った後、頬っぺたをむぎゅっと引っ張ってきた。



「十夜、痛い!」



力は抜いてると言えども、地味に痛い。


っていうかなんで抓られてるか分かんないんですけど!!



「まだ何も言ってねぇ。だから、居なくなるな」


「……へ?」



何も言ってない?何を?



相変わらず主語が抜けている十夜の言葉に脳内はハテナだらけ。



「意味分かんないんですけど」



そう不満げに零すと、十夜は頬から手を離し、フッと笑ってあたしの頭の上に手を置いた。



「近い内に分かる」


「……そのセリフ、今日何回目ですか」



暴走に行く前からその台詞ばっかりなんですけど。いい加減聞き飽きた。



「……そんなに知りてぇなら今日教えてやるよ」


「え、ホント!?じゃあ今教えて!」


「今は時間ねぇ。帰って来たら教えてやる」