「凛音ちゃん!大丈夫!?」



壱さんがハンドルをぐるんぐるん回しながら声を掛けてくれるけど、早くも車酔いしてしまったあたしは返事出来ない。



「大丈夫じゃなさそうだな」



ぐったりしているあたしを見て苦笑する彼方。



「ごめんね!すぐ着くようにするから!」



そう言って、更にスピードを上げる壱さんに、“いやいや逆効果だから!”と思わず心の中で叫んでしまった。



……陽きゅん、“何かあった時の壱の運転は怖い”って言った意味、分かったかもしれない。


壱さんの運転、超絶コワイんですけど。











「……チッ。追い付いて来やがった!」


「煌」


「あぁ、分かってる」



頷いた煌は、誰かに電話をかけるのか、ポケットからスマホを取り出した。


この揺れで、左手にグラブレール、右手にスマホとか器用すぎでしょ。



「もしもし、陽か?もうすぐ着くから倉庫のシャッター開けとけ。俺等が入ったらすぐ閉めろ。……あぁ、頼んだ」



どうやら電話の相手は陽だったらしい。


良かった。陽と千暁くん無事倉庫に戻れたんだ。




そう、ホッと息をついたのも束の間。




「凛音!」

「……っ」



突然、十夜に覆い被されるように抱き締められた。


「なに!?」


十夜の背後からガンガンと響く凄まじい打撃音。


身を捩って見上げれば、そこにはバッドを振り上げる一人の見知らぬ男が居て。



あ、有り得ないんですけど……!



迫るバッドの先端に慌てて十夜にしがみついた。



「ジッとしてろ」


強くなった十夜の腕の力に、この状況がヤバイ事を悟る。