「──凛音」
十夜に呼ばれて視線を元に戻すと、十夜は何か言いたげにあたしを見下ろしていて。
「何?」
暗くて顔がよく見えないから、少しだけ近寄っていく。
「初代の命日にお前も表に出す予定だ」
「……は?」
命日?表に出す?
意味が分からなくてキョトンと十夜を見上げると、十夜は小さく笑みを浮かべ、「これが終わったら教えてやる」と言って右手をグラブレールから離した。
離した手は空に向かって高く挙げられ、ギャラリーからまた歓声が湧き上がる。
……あれって冬吾くん?
十夜の後ろを通り過ぎていったのはバイクに乗った冬吾くんで。
バイクの後ろには長い棒みたいなのがくくりつけられていた。
何、あの棒みたいなの。いつもは無いよね?
「伝説の鳳凰が舞い降りた」
「……え?」
微かに聞こえた煌の呟きに振り向こうとした時、掲げていた十夜の右腕が後方に振り上げられ、それと同時に今までで一番大きな歓声上がった。
「凄い……」
振り向けば、吸い込まれそうなほど綺麗な二羽の鳳凰が視界に飛び込んできて。
そのあまりの美しさに、それが“旗”だと理解するのに時間を要した。
今にも“旗”から飛び立ちそうなほど大きな両翼を広げている二羽の鳳凰は、この世のモノではないほど美しい。
“伝説の鳳凰が舞い降りた”
煌がそう言ったのも分かった気がした。
共に寄り添い、共に飛び立とうとしている二羽の霊鳥。
“伝説の鳳凰”
その美しい二翼の姿に、皆の視線が釘付けになっていた。


