「十夜?」
そう呼びかけるど反応は無くて。
けど、手はまだ握ったまま。
……もしかして、十夜もお礼を言ってくれてるとか?
今の会話の流れからしてそうだよね。
こっちを見ようともしない十夜にふふっと笑みが零れて。
ホント、不器用なんだから。
そう心の中で呟いた。
「──凛音」
声を出さずに笑っていると、煌に呼ばれて、「ん?」と助手席を覗き込む。
「お前もだろ?」
「え?」
「お前も愛してんだろ?鳳皇のこと」
「……っ」
前を向いたままそう問いかけてきた煌に言葉が詰まった。
だって、いつもとは違う真剣な声色だったから。
……なんで、急にそんな声出すの?
「……っ、あ、当たり前でしょ!あたし、煌より“鳳皇”の事愛してるもんね!」
「っ、テッメェ……!」
泣きそうになったのを誤魔化すように、後ろから煌の頭をワシャワシャと掻き回す。
「オイ、馬鹿凛音!やめろ!」
「やめないー」
払い除けようとする煌の手をサッとかわして、更に乱暴に掻き回した。
……伝わってた。
皆の事が大好きなこと。
鳳皇を愛してるって事、
ちゃんと気付いてくれてた。
ありがとう。
気付いてくれてありがとう。
「……テメェ、覚えてろよ」
「もう忘れたー」
ふふっ。
あたしも十夜と一緒だ。
照れ臭くて“ありがとう”って口に出して言えないや。


