「凛音ちゃん」

「ん?」



呼び掛けられて振り返れば、そこに居たのは冬吾くんで。



「俺等がさっき言った事は本当だから。皆凛音ちゃんの事が大好きなんだ」


「……冬吾くん」


「だから頑張ってね。俺等、凛音ちゃんが“鳳凰妃”になれるの待ってるから」


「……うん」



応援してくれる冬吾くんに、あたしは「うん」しか言えなかった。



だって、あたしは“鳳凰妃”にはなれないから。


どんなに頑張っても十夜の“彼女”にはなれない。



それが分かっているのに、“頑張る”なんて言えないよ。



「十夜の彼女……」



十夜を想うだけで奥底にしまい込んだ感情が一気に溢れ出して。


蓋をしても奥底にしまい込んでも、その感情は抑まりきらずに次から次へと溢れ出してくる。



……あたしは、十夜の彼女になれない。



溢れ出す哀しみと果てしない罪悪感。


それが大波となってあたしの心を襲う。



この大波がおさまるのは十夜達に打ち明けた時だけ。



けど、もし打ち明けたとしても、また違う大波があたしを襲うだろう。




今までの大波よりも更に大きい、“別れ”という名の大きな波が。