「──凛音」
「うわっ。ビックリした」
……なんだ、十夜か。
誰かと思ったよ。
「ん」
「……え?」
不意に手渡されたのは、よく見掛ける無地の白いビニール袋で。
覗き込めば、中には買いに行こうと思っていた焼きそばが三つほど入っていた。
「十夜が買ってきてくれたの?」
ビックリして、袋と十夜を交互に見る。
「……あんま並んでなかったから」
あんま並んでなかったって……。
「……嘘つけ。結構並んでたくせに」
「えっ」
並んでたの?
ぼそりと呟いた煌の独り言に目を見開いて視線を上げると、どうやら十夜には煌の声が聞こえてなかったようで。
漆黒の瞳が、真っ直ぐあたしを見下ろしていた。
「……十夜、ありがと。嬉しい」
そう小さくお礼を言えば、フッと頬を綻ばせた十夜。
その笑顔はまるで親に褒められた子供のようで。
胸がきゅんと高鳴った。
……もしかして、あたしの機嫌が悪くなったから買いに行ってくれたの?
一人になると面倒臭い事になるって分かってるのに?
「……えへへ。焼きそば食べるの楽しみ」
「食い過ぎんなよ」
──十夜、ありがとう。凄く嬉しい。
せっかく一緒にお祭りに来れたんだ。
ギャラリーなんて気にしないで楽しまないとね。


