「十夜?」


「り──」


「凛音ちゃん、俺先降りてるね」


「え?あ、うん」



先に車から降りる壱さんを見送って、もう一度十夜の顔を覗き込む。



「十夜、着いたよ?」


「あぁ」


「早く行こう!」



スマホを巾着に戻して、十夜の腕を軽く叩きながら「早く早く」と急かす。



「あんまはしゃぎすぎんなよ」


「ラジャー!!」



十夜に向かってニッと笑い、敬礼。



そんなあたしを見た十夜は「阿呆か」と言ってピンッとあたしのおでこにデコピンすると、後部席のドアを開けて先に外へと出た。



「ん」


「……えへへ。ありがと」



右手を差し出してきた十夜にお礼を言って、遠慮なく手を乗せる。



な、何か恥ずかしいかも……。



別に初めてじゃないのに、今日は何だか気恥ずかしくて。


まるでお姫様になった気分だ。











「凛音!あっち!あっち行こう!俺、カキ氷食べたい!」


「え、カキ氷!?あたしも食べたいー!」


「オイ!あんま離れんなよ!」


「分かってるー」



陽と手を繋いで、数十メートル先にあるカキ氷屋を目指して走り出す。



「凛音、ごめんな。連れ回して。俺、あの中に居るの耐えらんなくてさ」


「んーん。あたしも同じ事思ってたから抜け出せて良かった」


「だよな!俺だけ普通だからなんか居づらくて」


「え、何言ってんの!?陽すっごい可愛いよ!?女の子達から人気あるし!」


「えー……」


「……まぁ、あの人達が人気ありすぎてちょっと存在感薄くなってるけど」


「……だよな」



カキ氷屋の前で並んでるあたし達の視線はすぐ傍にある広場の端へと向けられていて。


そこには十夜達の姿が見えないぐらい人だかりが出来ていた。