「十夜──」



手、繋いで。


そう言おうと思ったら、突然抱え上げられて。



「ちょ、十夜!?」


「大人しくしてろ」



有無を言わさない物言いでそう言った十夜は、あたしの顔を見る事なく階段を下り始めた。


ホント、言葉足らずなんだから。



いつもよりゆっくり下りていく十夜にふふっと零れ落ちる笑み。



十夜はいつもそうだ。

見ていないようでいつもちゃんと見ててくれてる。


ホント、優しいよね。







「十夜、一人でもう歩けるから」


「………」



階段を下りてもまだ歩き続ける十夜にそう言うけれど、下ろす気はないらしく、無視。



まぁ、無視されるのは良いんだけどね。


痛いんですよ、視線が。



ちらり、眼下で見下ろせば、さっきと変わらずあたし達をガン見しているメンバー達がいて、ハハッと心の中で乾いた笑いが零れる。


そりゃ、十夜達は見られ慣れてるかもしれないけどさ。あたしはこういう経験あまりないんですよ。


なんか、珍獣にでもなった気分だし。





「凛音さん!」


「……っ、千暁くん!?」



一階に到着したのと同時に駆け寄って来たのは鳳皇メンバーの一人、千暁くんで。


十夜に下ろして貰い、千暁くんの元へと駆け寄っていく。



「千暁くん、もう大丈夫?痛くない?」


「もう大丈夫です!痣も消えてきましたし!」



ホラ、とピョンピョンと飛び跳ねて回復アピールする千暁くんはあの日から学校には来てたけど倉庫には来てなくて。


暫く休養するって言ってたけど、お祭りに行くって聞いて我慢出来なくなっちゃったのかな?