青春に、寄り道中。




どんな感情でその絵を描いたんだろう。

……そう思わせるような表情をしていた。



「……あのさ、海って描いたことある?」

「あるよ」

「見てみたいな」



遠慮がちにそう言ってみると、高瀬くんは柔らかい表情で「いいよ」と答えた。


そしてあの100メートルのキャンバスはわたしの手の届かない高い場所に置かれて、高瀬くんは隣の棚へと移った。


160センチのわたしと高瀬くんの身長差は、約20センチくらい。

だから高瀬くんがわざわざ背伸びをしてまで棚の一番上に置くってことは、それほどだれにも見られたくない絵だったんだ……。



「美術部に入って初めて描いた絵なんだ。だからすごく下手だけど」



そう言って渡された大きなキャンバスには、青い海と空が水彩絵の具かなにかを使って淡く描かれていた。


というか高瀬くんのその言葉……。