棚に重ねられたキャンバスを、わたしは勝手にひとつ取り出してみた。
「すごい……」
それを見るなり、零れた言葉。
そんなわたしに気がついた高瀬くんは動揺しながら、「勝手にさわらないで」と私の手からキャンバスを取ってしまった。
「あっ、ごめん」
「……いや、俺こそごめん」
でも、とってもきれいだった。
それはわたし見慣れた光景だった。
ーー100メートルのスタートから見えるゴールまでの景色。
それは簡単に描かれていたけれど、なんだか不思議な雰囲気で、見てすぐに体がしびれるようなそんな感覚がした。
「陸上、好きなの?」
「ちがうよ。これは成田に頼まれて描いたやつ」
「そっか」
手に持つキャンバスを見る高瀬くんの横顔は、どこか寂しそうにも見えた。
だけど、とっても悔しそう。



