そんななか、アナウンスは聞こえなかったけれど、雷管の音が耳に飛び込んできた。
顔だけトラックのほうに向けて、そしてすぐに涙を拭う。
ゴール付近。
白いユニフォームと赤いユニフォームのふたりは、接戦で。
「がんばれ……」
届かないくらいの小さな声で、高瀬くんに向けてそう言ったとき。
ゴールの一歩手前くらいで高瀬くんはぐんと前に出てきて、一番最初にゴールラインを越えた。
すごいや、高瀬くんは。
中津くんに勝ったんだね。
目標、達成できたんだね。
「吉井、医務室に移動しよう。歩けるか?」
「……はい」
いつの間にかいた先生に声をかけられ、若菜の肩を借りながらゆっくりと歩き、医務室へと向かった。
「高瀬くん、すごく速かったね」
「華純もがんばったよ。いままでにないくらい、速かった」
若菜にそう言われ、また涙が出てきた。



